「えっ!?乾先輩って彼女いるんスか!?」

「しっ!おチビ、声がでかいにゃ!」

「・・・・・・すんません。」

「いや、でも、俺も最初聞いた時は、マジ驚いたぜー!」

「ホント意外っスよね。・・・・・・一体、どんな人なんスか、乾先輩の彼女って。」

「そこだよな!俺も気になるっス!」



休憩中、部室の隅で集まっている三人。
一年の越前、二年の桃城、三年の菊丸だ。
学年も性格も違う彼らだが、割合に三人でいることが多い。



「実は・・・・・・今日、部活を見に来てるんだよね!」

「「マジっスか!?」」

「見に行く?」

「当然っスよ!」

「菊丸先輩、初めからそのつもりだったスよね?」

「まあね〜!んじゃ、俺について来いっ!」

「ラジャー!!」



菊丸を先頭に、桃城、越前も部室を出た。
そのまま三人は校舎側のコートの方へ向かう。
すると、フェンスにもたれた乾と、その横で微笑む女子生徒の二人の姿が目に入った。



「へぇ〜、あれが。」

「何て言うか・・・・・・普通に可愛い感じっスよね?俺は、てっきり乾先輩と似たような人かと・・・・・・。」

「だよなー?乾には勿体ない!って言うか・・・・・・乾なんかのどこが良いわけ?!って感じだよねー。」

「なら、聞けばいいんじゃないっスか?」

「わ、え?!ちょっと、おチビ!!」



菊丸と桃城の焦りを余所に、越前はスタスタとその二人へと近づいていった。
さすがは超一年生といったところか。こういうところでも気後れすることはないらしい。



「乾先輩、今いいっスか?」

「ああ、構わないよ。・・・・・・後ろの二人も同じ用事かい?」

「あ、えーっと・・・・・・。」

「うんにゃ。俺たちは、おチビのただの付き添い。」

「・・・・・・そうか。で、何の用だい、越前?」

「その人、乾先輩の彼女なんスか?」

「えっ・・・・・・?!」

「げほごほっ!!」



越前のあまりの直球さに、彼女が驚くと同時に、菊丸がむせ返った。



「英二先輩、大丈夫っスか・・・・・・?!」

「だって、おチビの奴・・・・・・!!」

「越前はああいう奴っスよ・・・・・・。」



後ろの二人の話し声も聞こえているだろうが、越前は構わず続ける。



「どうなんスか、乾先輩。」

「ん?彼女のことか。そうだよ、彼女は俺の恋人。クラスも同じ、だ。」

「は、初めまして、です。」

「どうも。先輩は、乾先輩のどこに惚れたんスか?」

「えぇっ?!!」

「「ッげごほっ!!」」



今度は桃城も同時にむせ返った。



「それは、俺も聞いておきたいな。」

「乾くんまで・・・・・・!」

「答えられないのか?」

「えっと・・・・・・。その、優しいところとか、冷静なところ、とかかな。」

「他にはどこっスか?」

「え、他?え〜っと・・・・・・部活を頑張ってるところがかっこいいな、って思ったり・・・・・・、あと、いろいろなことに興味を持ってくれるから、私の話も熱心に聞いてくれるとことかいいな、って・・・・・・。もうこれぐらいで許して!」



顔を真っ赤にしたは、そう言うと、俯いてしまった。
本当、なんでこんなに可愛らしい子(人)が・・・・・・と、菊丸と桃城が同じことを考えている中、越前だけは少し違った。



「じゃあ、乾先輩は?乾先輩は先輩のどこが好きなんスか?」



乾からの答えも聞いてこそ、その疑問が解けると考えたのだろう。いや、単なる好奇心だけかもしれないが。



「俺か?そうだな・・・・・・。外見も可愛いと思うが、何よりこういった仕草や言動を愛らしいと思う。それと、先ほど、は俺を優しい、話を聞いてくれる、と評したが。俺はの方が優しいと思うし、俺が聞けば熱心に話してくれるの姿勢に好感を持っている。それから、部活を応援してくれるところや・・・・・・。」

「乾くん!も、もういいんじゃないかな・・・・・・!」

「何だ、聞きたくないのか?」

「聞きたいし、嬉しいんだけど・・・・・・越前くんたちもいるし・・・・・・。」

「ほう。では、二人きりの時に言うとしよう。」

「そ、そういうつもりで言ったわけじゃ・・・・・・!!」

「はいはい、ごちそうさまっス。」



越前の呆れた声に、がハッとした。
今までのやり取りも相当のものだったと気付いたようだ。
真っ赤になっているとは対照的に、乾はあくまで冷静だった。



「納得のいく答えになっていたかな?」

「そうッスね。俺はもういいッスけど・・・・・・。」

「え!俺たち?俺たちは・・・・・・ほら!おチビについて来ただけだもんね、桃!」

「そ、そうッスよね、英二先輩!」

「そういうわけだから・・・・・・お邪魔しましたー!」



そう言うと、菊丸は桃城とともに、越前を引っ張るようにして、その場を去った。



「ちょっと・・・・・・!何なんスか・・・・・・!」



越前がそう抗議しようが、お構いなしに部室へ戻る。
部室に戻ってからも、越前は不機嫌そうに先輩二人へ問いかけた。



「だから、何なんスか、さっきから・・・・・・。先輩たちも気になってたんじゃないんスか?」

「いや、そうだけど!おチビがぐいぐい行き過ぎ!」

「全くだぜ!お前は空気を読むってことを知らねぇのか!?」

「何それ。先輩たちに言われたくないんだけど。」

「にゃんだとーっ!?」

「お前なあ、そういう態度が・・・・・・!」

「そこまで言うなら、次は先輩たちが聞いてくださいよ。ちゃんと空気を読みつつ、聞けるんスよね?」

「よーし、わかった!やってやろうじゃん!」



などという会話が部室では繰り広げられていた。
一方、乾たちはと言うと・・・・・・。



「――つまり、あいつらがこれからもやってくる確率は86%ってところかな。それでも、また部活を見に来てくれるか?」

「わ、私はいいけど・・・・・・乾くんは迷惑じゃない?」

「もちろん。の応援があると、より頑張れるからな。」

「ありがとう・・・・・・。」

「応援してもらってるんだ、お礼を言うのはこっちの方だ。それに、あいつらと話すことで、の新しい一面も見られるようだしな。ただ、あいつらと仲良くなりすぎては困る、という気がかりもあるが。」

「っ、そんな風に言われると・・・・・・。」

「おや?今は、周りに誰もいないんだ。なら、こういうことを言ってもいいんだろう?」

「だから、そういうことじゃ・・・・・・!」



そんなやり取りが繰り広げられていたことは、もちろん部室にいた三人が知る由もない。
が、結局、似たような場面を何度も目にすることになるとは、この時、誰も予想していなかった。
・・・・・・いや、正しくは、そうなるよう仕組んだ、ただ一人を除いて。













 

乾さん、お誕生日おめでとうございます!
これは久々にアニプリを見返してる時、「この三人(菊丸&桃城&越前)の仲良い感じ好きだよな〜、書きたいな〜」から始まった話です。・・・うん、乾さん、すいません!(笑)

そのおかげで、あまり乾さんとの絡みが無いですね・・・(苦笑)。すいません。
あと、正直、オチも全然思い付かなかったんですよね・・・(苦笑)。すいません。

('16/06/03)